がん患者の父

娘が膵臓がんになった。まさかまさか、痛恨の極みです。

公的支援をさがす

体力の弱った娘のために、家内が娘家族分の夕飯のおかずや食材を用意し、三つ上の姉が運び、後片付けを済ませて、姉が帰宅するのは、午後10時を回ります。電車を乗り継げば往復4時間はたっぷりかかります。


こんな日々が続くと、姉も家内も疲れがたまるし、姉の家族もしっくりしない。と言って、難しいのは、娘にあなたの世話で、みんなはヘトヘト、ストレスはたまり、気疲れが絶えないなどと、愚痴をこぼすことは、絶対あってはならない。家族が支えるのは、当然です。しかしながら、大変な重圧で、家族愛がどうの、という問題とは別個の重い課題です。


そこで、週1,2回でも家事介護や、この先の衰弱の備えて通院介助や、在宅看護の道をもとめて、娘の住む市の社会福祉協議会に問い合わせてみました。介護保険の適用の例外に高齢者でなくても難病、重病者であれば対象になると聞いたからです。


社協の担当者の女性は、介護支援というのは、「同居の家族がいない」というのが原則。会社員の夫と中2の息子が居る限り、支援できないという。


サラリーマンの夫が夜遅くまで働き、思春期に入り始めた一人息子は部活と塾通いに追われ、とても買い物や炊事や、掃除、洗濯の手伝いなんかできないと実情を説明しても、よくわかりますが、ムリでしょうとの返事。


そういう彼女も、言葉の節々にそのあたりの実際の事情はわかっているようだが、立場上、法律の規定が、そうなっているとしか言いようがないらしい。


一般論でいえば「同居の家族不在」が介護の条件なら、老夫婦、老老親子、病弱家族も介護対象にならず、なるのは「孤老」だけか。社会保障の実際は運用を受ける側に立ってみると、きわめて厳しい枠をはめていることがわかります。


娘の場合、夫婦が籍を抜くか、片一方が遠くに住民票を移すか。これなら成り立つ。あるいは、単身赴任で遠方に勤務している状況でも成り立つ。いわば、抜け道の小細工だが、
もちろん念頭にはない。


社協の彼女は家事一般はダメだけれど、通院介助や買い物付き添いはできるかもしれない。それに在宅看護という支援では、市地域包括センターが守備範囲としているとして紹介されたので、姉が説明を受けに行ってきた。


ここでは、入浴を介助したり、ベッドや松葉杖のような補助道具の貸し出しのほか、在宅看護の要である近隣の医師とのネットワーク、訪問看護師との連携を築いてくれるという。


また有料のサービスについても、それぞれの窓口にも明るい。遠くない将来の、いざというときのために自宅の点滴や栄養補給などが必要と思われるので、ぜひとも道を開いたおきたい。


というわけで、近く社協の方から調査員が娘の自宅を訪問、起居動作や病状や生活機能などたくさんの聞き取りをすることになり、一方で娘の方から主治医に病状についての意見書を申請。この聞き取り調査結果と医師の意見書の二つの審査で、国の定める介護等級認定がきまる段取りです。


この等級については、「要支援1,2級」と「要介護1,2,3,4,5級」の合計7段階があります。級分けの眼目は、「○○についてどこまで自立してできるか」のようです。娘の認定が、どうなるか。一月以内に決まるそうです。





栄養補給へ

通院日に行っても、抗がん剤の投与はお預けとなりました。これで4週連続です。これまで主に投与見送りの理由には、骨髄抑制があげられていたのですが、今回は白血球も好中球も正常の範囲内でした。


それでも見送ることについて、医師は体力の回復が重要、薬剤投与の副作用に耐えられる体力がいまはない、と言うそうです。確かに元気なころとは見るかげもなく、げっそり衰えています。


これまでにも何度か書きましたが、抗がん剤のパラドックスです。病状が悪いから抗がん剤投与→副作用で体力悪化→不投与で回復→再投与の副作用、、のサイクルです。薬剤が病変部に与える有効性が、このサイクルをずっと上回らなければ、患者にとっては苦痛しかないわけです。


娘の場合、理想的な好例でいえば、投与で病変部の癌細胞が著しく縮小したり、衰退したりして、より確実な手術や放射線治療へ移行できることでしょうが、、、。


一人息子の期末テストが終わったので、いっしょに夕飯をしたいと婿殿の車でやってきた。長女の家族を交えて、息子の食べたいパスタとピザのレストランに行きました。


私にとっては十月初めのホテル・ランチいらいの出会いでしたが、あまりの変わりように、おもわず目をそらしました。わずか2か月ほどで、4キロ痩せたといいます。


もう全体の痩せようとか、顔の表情、色つやや首筋や手首の痩せようについて書き記すのさえ可哀そうです。女性だから、日々、鏡に向かうことが多いのに、そこに映る自身の変容を、どう思っているのか。案じるだけでも、つらいことです。


味覚障害が強くて、何を食べても味がしないと言っていました。ロクに食べないのに、下痢をするという。考えられる限りの悪い状況にあります。


レストランでも一皿分も食べきれないと、自分だけの注文をせず、みんなの皿から少しずつ取り分けてもらって食べていました。大勢が美味しく食べる雰囲気にのって、少しは口にしていました。


これでは、確かに体力はつかない。抗がん剤投与見送りの際に栄養剤の点滴をうけていました。これは見送りの変わりする処置だと思いこんでいましたが、尋ねてみると、希望すれば毎日でも可能だとのこと。


なーんだ。ということで週三回、それだけをしに通院することにする。知らない、尋ねない患者側にも問題ありですが、そういう方法があると事前に話してくれない医療者側にも問題あり、ですね。キメ細かいコミュニケーションが双方に必要です。





温熱療法のこと

主治医からは、いい返事をもらってはいないけれど、娘は、温熱療法ができるクリニックに通っています。はじめのころ、温熱療法のことを主治医に言ったら、いい顔をしなかったので、遠慮していましたが、体調は悪くなるばかり。なにかできることはないか。


患者が、主治医の守備範囲外のことに力を求めることに、主治医が気乗りしない気持ちは理解できますので、告げずにかよってます。


娘も家族も、とくにがん患者は、免疫力を高めることなら、怪しげな民間療法は論外にして、標準治療のほかにも自主的に運動や食事や補助療法を活用したらいいと考えています。


最初、娘は車で行けば近いところにある温泉岩盤浴に行きました。30分ほど丸いドラムのような筒のなかに顔だけ出した寝た状態で体を温めるものです。スーパー銭湯などにある岩盤浴とは少し趣が変わりますが、とてもいい汗をかいて、なにより心地いいそうだ。


体を温めることで気分がよくなるなら、やはり温熱療法もいいのではないか。そう考えて、週一で計8回、温熱療法を並行して受けていました。


温熱療法というのは、寝た状態の生体を上下から電極板をサンドイッチ状にはさみ、ラヂオ波を流します。細胞は41℃以上の熱に弱いという特質に目つけ、42.5℃以上の熱で奥深いところにあるがん細胞を加温し、死滅させる、、、という理屈です。


それなりに効果があるとされて、早くから健康保険の適用が認められてはいますけれど、
早い話が、三大治療法の補助的療法というのが、位置づけのようです。がん医療の世界では、あまり重要視されていない。


理屈とは別なところで期待通りに行かない側面があるのでしょうが、娘は、やってみると、気分がいいし、気分転換にもなると通ってました。


ところがです。1クール8回で、健康保険の適用が効かなくなるというのです。医療行為の途中で健保適用の回数制限があって中止というのは、初耳です。


病気が治らないまま、あとは自費でやってくれ。そういうシステムって、ありなのか。長引くむずかしい治療の場合でも、そのような回数制限があるのかどうか。


クリニックの話では、年度が代わると、再び同じクリニックでも可能と言います。また府県が違えば、大丈夫だとも言います。健保の主管団体が代わるから、いいそうだ。なんだか不合理、抜け道みたいな制度のようです。


というわけで、他県の病院を探して、通っています。これも8回で終わりになるはずですから、その後はどうすればいいのかな。ほんのひとときでも、娘が心地よいという環境がなくなりそうです。