がん患者の父

娘が膵臓がんになった。まさかまさか、痛恨の極みです。

小康の日々

三寒四温とあって、暖かい日があります。日差しを浴びて、庭でごそごそしていますと、汗ばみます。抗がん剤治療中の次女も、こんな日には気持ちが晴れやかになるらしい。お日様のおかげですね。お天道さんとはよく言ったもんです。


いきなり話がそれますが、ウン十年まえのこと。一年のうち、ほぼ半年くらいは頭上に雲や雪空が垂れこめる日本海側の北の都市に仕事で赴任していたときは、憂鬱でたまらなかった。


来る日も来る日も雪で、少しの間、晴れ間があると、だらしなく溶けた雪道をべちゃべちゃと長靴を履いて歩く。情けないやら、カッコ悪いやら、バカらしいやら。土地の人の心情なんかに思いやる余地もなく、腹ただしい日々だった。


まったくうんざりしたもので、早く転勤できないかと、そればっかり考えていた。ほとんど、うつ状態になっていたようだ。いまでも、寒くて、どんより曇った日は朝から気持ちが落ち込む。お天気は心身の状態に大きな影響がありますね、それを痛感した体験です。


ところで、娘は、そんな暖かい晴れ間のとき、いつも食材運びや通院に付き添っている長女をさそって、映画を見に行った。電車で三駅ほど先のおおきなショッピングモールのあるところ。見終わったあと、甘いものを食べて一服した。


その後も、一人息子の衣類などの買い物にモール内を「さっさと早く歩き回り、どこが悪いの」と思わせるように元気だったと長女が家に来て話していた。長女は目と鼻の先に住んでいて、来ない日はめったにない。その長女を通じて娘の様子を推察しています。


そうか。そんなに元気を回復してきたのか。ほのかな期待がもてるかも。いやいや、ほんの束の間の光かな、いろいろ思いが浮かび、また迷う。


抗がん剤投与が4回終わったので、予定の5回目を先送りして、この月末にCT検査などをすることになった。約二か月半の薬物療法の成果を精査してみようという段取りのようだ。


果たして、がん細胞は小さくなったのか、勢いが弱まったのか。なにか得がたいような喜ばしい兆候でもみつかればいいのだが。


願わくば、小さくなったり、消えていたり、あるいは、想定外の夢のようなミラクルが起きていやしないか、そうあってほしい。


ところが、残念な情報を目にする。最近の新聞に載っていた国立がんセンターに勤務経歴がある腫瘍内科医の記事によると、最近の抗がん剤治療の有効性はめざましいものがある。その効果をがん部位ごとに


A群「治療が期待できる」                       特定の白血病やリンパ腫など      
B群「症状緩和や延命の効果が十分期待できる」    胃、大腸、乳、卵巣、膀胱がんなど゙
C群「延命効果・症状緩和が期待できる」   腎、肝、脳腫瘍、甲状腺、胆道がんなど


の三分類に分けていたが、娘が苦しむ膵臓がんは、C群の範疇だった。


悲しいことだ。さらに悲しいことには、治療については、「初期」か「他臓器への転移後」かを区別して考えることと指摘していることが胸に刺さります。


つまり、初期であれば「治癒」を目指すが、転移後であれば、完治がむずかしくなり、「延命と症状の緩和」が目標になるということです。


そうであれば、著しく抗がん剤治療の有効性が大きくなったと判断する専門家の目にとっても、「C群」にあり、「転移後」である娘は、絶対絶命のピンチにあるのではないか。


もはや、言うべき言葉が出てこない。いついつまでも、見かけだけでもいいから「日々小康」状態が続いてほしい。一人息子は、まだ中一なんだ。その成長を見守る喜びをうわばないでくれ。