がん患者の父

娘が膵臓がんになった。まさかまさか、痛恨の極みです。

生きる力

休薬一週間のあと、抗がん剤投与に出向いた娘に、看護師がきょうは止めた方がいいではないかとアドバイスしてくれ、医師もそう判断した。その代わりというのか、栄養補給の点滴をうけて帰宅したそうだ。


こんなことは初めてで、娘は、ずっと下痢症状が止まらず、がんばって食べても、ぜんぜん身につかない。体の衰えが著しく、歩きにも力が入らず、立ち上がる際にも、しゃんと立ち上がれないほどになり、ひどく疲れているふうに看護師に映ったのだろう。


食事はおかゆとおじや(雑炊)しか食べられないという娘のメールで、家内と長女が車で様子を見に行った。食べやすい食材やスープの材料などをいっぱい積み込んで。


娘は炬燵で寝ていたそうだ。マンションに住む婿殿と一人息子の3人家族。別居する体のやや不自由な義母がいますが、ほとんど来訪しないらしい。


昼間はいつも一人でいます。体が弱ってきてから、掃除や家事の後始末、洗い物などが行き届かないので、家内や長女は行くたびに”出張家政婦”と称して、部屋中を片付け、大掃除してきます。


炬燵に入って、持っていったケーキなんか口にして、あれやこれや話していると、だいぶ元気を取り戻してきたそうだが、帰宅した家内は、かわいそうで正視できない感じだと嘆く。


TS-1の特徴的な副作用のせいか、顔色は色素の沈着で真っ黒になり、首筋はげっそり痩せてきた。みんなでランチをした一か月前とくらべると、様子がそうとう悪くなっている。


こんな短い期間に、これほど容体に変化がするものか。話を聞いている当方も、進行するがんの恐ろしさに言葉もない。なにも手をかしてやれないわが身の非力がつらい。


娘が、いま必死で頑張る気持ちを支えているのは、一人息子の存在。息子の成長が、いちばんの生きる糧になって、息子はいなければ、もっと早く精神的にダメージが大きかっただろう。


家内は「できることなら、娘をこちらで引き取って世話してやりたい」と言う。娘に気持ちを計りかねて、軽い口調で娘にそんなことを言って見たら、娘は息子と離れ離れになる暮らしは考えられないと。


母子を引き取るとしたら、息子の通学がむずかしくなる、部活や友人との付き合い、塾通いができなくなると、あくまで息子の生活を乱したくないと話しているそうだ。


もっともな母親の意見です。しかし、もっと容体が悪化して、足腰に力が入らず、寝たきり状態になってきたら、どうするのか。婿殿は、そうそう会社を休めない。この一年間でもずいぶん休んで、うらまれているところもあるらしい。義母は一人でマンションまで通えない。


家内も長女も当方も、そういう状況を想像して案じているのだが、そうなったら、どうするか。いま病魔と苦闘する娘と話し合うタイミングがつかめない。


がん患者に「よくなる希望」を話すことはやさしいが、ポイント オブ ノーリターン(引き帰し不能点)を越えたと考えられる患者に「悪くなる予想」を話すのは、限りなくむずかしい。


11月30日付け朝日新聞電子版によると、がんの部位に関係なく使える免役チェックポイント阻害剤「キイトルーダ」(MSD社)が、年内にも厚労省が認可するとありました。


例のオプジーポと同じような阻害剤だが、血液がんを除く、すべての臓器の癌で標準治療が困難な場合に使えるというのが注目されます。こういう薬剤の効用に浴する機会があるのだろうか。


いつも夢想します。かつての感染症に対するペニシリンのような、結核に対するストレプトマイシンにような歴史に名を残すような画期的な抗がん剤の登場が一日も早くあることを、、、。