がん患者の父

娘が膵臓がんになった。まさかまさか、痛恨の極みです。

重粒子線治療のこと

娘の抗がん剤点滴は、好中球の減少がおおきくて、二週連続ができない状態。素人目にもフォルフィリノックスに続く、二つ目の抗がん剤になるアブラキ+ジェム併用治療は効いていないのではないか、と疑念がわきます。


見かけは元気な様子だが、外出から帰ると、ぐったり寝込んだり。体重はじわじわ減り続けていて、本人も「計るのがいやになる」。体重測定は気持ちが萎えるようです。


なにか効果的な治療法はないものか。娘も婿殿ももちろん、ずっと頭から離れないので、温熱療法や免疫療法を行う医療センターをたずねたり。最近、主治医はあまり乗り気でないらしいが、温熱療法を別の病院でやってみようと決めたばかり。


今回は婿殿を誘って「切らずに治す がん重粒子線治療」という講演会を聞きに行ってきました。この放射線の一種、重粒子線を使って治療する方法は、日本で開発されて、もう24年になるという。


しかし、標準治療に組み込まれているのは、今春適用になった前立腺がんと頭頸部がん、2年前に適用された骨軟部肉腫の三部位しかない現状。長い開発期間と巨額の費用をかけた大装置療法にしては、なぜ?


重粒子線や陽子線治療については、昨年、セカンドオピニオンで医師に尋ねたとき、娘のような転移がある進行がんには不適切だと一顧もされませんでした。


しかし、その後の進展もあるかもしれない、藁にもつかむ思いで講演を聞きました。その感想を結論から言えば、やはり、重粒子線治療の特徴は、限られた部位に固定されたがん、それもステージでいえばⅠ期ないしⅡ期くらいであれば、短期間にそれなりの効果があるという感じでした。


主催者側にいた外科医が話していました。外科でやるか、重粒子線でやるかは、患者の部位の病状(手術困難な場所)、体調(高血圧、心臓や糖尿病を患っている、体力がない高齢者、、著しい手術恐怖者)をよく勘案して、選択しているという趣旨で。


残念なことながら、進行がんで、抗がん剤治療を受けている段階の患者には、適用されない治療法のようでした。セカンドオピニオンの医師の醒めた対応から進んでいませんでした。


素人考えでは、転移があっても、まずは原発である膵臓がんの局所だけを重粒子線など放射線で叩くやり方はできないのかと思うのですが。


この療法、すでに15年まえから、先進医療扱いが認められています。技術料はおおむね300万円超。それ以外の費用は保険適用が可能といいます。非常に高価な治療ではありますが、命には代えられません。怪しげな民間療法とはまったく異なります。


こうした治療法が、ステージの進行したがんにも、安全に有効性がある日が早くくることを願う講演会でした。



3年生存率

がん生存率71%
「乳」95%「膵臓」15%
 国立研が初公表


9月12日付け毎日新聞、一面の左肩に位置する記事の見出しです。膵臓がんが、がんのなかでもきわめて難治のがんであることは、娘の罹病を知って以来、百も承知になりましたが、やはり衝撃的な、救いのない現実でした。


「うーん」うなってしまい、記事を読みすすめるのは、ちょっと一呼吸を置かざるをえませんでした。こうしたときは、いっぱい水を飲むといいのかもしれない。そんな思いがかすめました。


国立がん研究センターが初めてがん患者(胃、肺など11部位)の3年生存率を公表したのです。これまでは「5年生存率」でした。「3年」を発表したのは、最新に近い治癒状況を知る、今後まとめる「5年」との推移を対比できるという方針のようです。


記録は全国の「がん診療提携病院」で扱われた2011年時点の患者のその後とあります。この手の記録は追跡期間の長さから、どうしても古いものになりがちで、ふつうは10年まえのものでした。


日進月歩といわれるがん治療の動向からすれば、2011年時点からの3年でも、古いと言えば、古いですが、統計を取るためには、このようなタイムロスは避けられないのでしょう。しかし、患者とその家族にとっては、大きな指標であることには違いありません。


見出しに取られた数字は、各部位の病期(Ⅰ~Ⅳ)の患者による平均値です。胃がんであれば病期全体では74.3%の生存率とありますが、病期ごとに見れば、Ⅰ期96.1%, Ⅱ期74.4% Ⅲ期55.3%、Ⅳ期14.1%となっています。


15%とある膵臓がんの病気ごとの詳細を見るには
「がん情報センター」(attps://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv_4_2011.pdf
頭のaをhに変えれば、アクセスできます)で公開されています。


それによりますと、膵臓がん(女性)のケースは次の通りでした。
Ⅰ期、54%
Ⅱ期、30,6%
Ⅲ期、10,7%
Ⅳ期、 2,6%


ショックはさらに大きく、気持ちが萎えてしまいます。胃や乳がんなどの生存率は上昇していますが、膵臓がんに限れば、ほとんど従来からの生存率と変化していないような印象です。


がんの悪性親玉をやっつけてくれる治療水準の向上は、これから先のことか、と再確認。娘には、もう先がないのだが、、、、。




一進一退?

腫瘍マーカーが、基準値の59倍にもなり、非常に心配していたところ、翌週は基準値内におさまっていて、娘は無事に抗がん剤点滴ができました。


しかし、安堵したのもつかの間、今週、またマーカーが高くなって点滴は見送りになりました。要するに上下の振幅が激しいマーカーで見る限り、病状は一進一退です。娘と家族は一喜一憂を繰り返しています。


最初のプランでは、「3週連続1週休み」だったのですが、これは一度も守られず、次いで「2週連続1週休み」と変更されましたが、これまた一度も順調に守られていません。


結局、抗がん剤投与というのは、プラン通りにならない、出たとこ勝負、あるいは臨機応変がひんぱんに起きる治療法のようです。


ただ、娘は副作用があまり強くないので、見かけ上は、痩せてはいるけれど元気。映画やコンサートに行ったり、姉をさそって買い物の出かけたりしています。病状の進行を気にする私たちは、縁起でもありませんが、なんだか生き急いでいるみたいに思えて仕方がありません。、


病気治療の目的というのは、例えば、風邪なら頓服や抗生物質で原状を回復すれば、それで完結、骨折なら手術なり、リハビリなどで通常の能力を回復すれば、それで一応の目的を果たせると考えます。


だが、手術も放射線治療からも遠い末期がん患者の抗がん剤治療というのは、そもそも原状回復はおろか、一応の治療達成という目的も見込まれていないようです。


ありていに言えば、いかに延命効果を伸ばすことができるかどうか、の治験のようなものらしい。がんについての漠然とした知識では、がんに治癒なし、あっても寛解しかない、
と理解していましたが、実際にがん患者を身内に抱えると、なんとも無力感にさいなまれ、切ないものです。


昨今のがん情報には、きまってこんなフレーズが書かれています。
「日本人の2人の1人ががんに罹り、3人に1人が亡くなります」。


近くの病院の待合室に流れるビデオ医療の情報を見るともなく、見ていると、「いまや日本人の死因にトップはがんで、昨年1年間36万人も亡くなりました」。


おそらく世界的にも、同様な傾向にあると思われます。がんによる死者は、もはや一地域の紛争で出る犠牲者をはるかにこえています。世界的には、膨大な犠牲者がでているのにちがいありません。


娘のがん罹患を機に想うことは、いまさらながらですが、がんは人類にとって最大の内なる脅威です。天然痘の制圧やポリオの根絶作戦のように、国際社会ぐるみで医療・科学技術を総動員して立ち向かうべき喫緊の課題だと痛感します。


寡聞にして、そういう方向で世界が動いているのかどうか、知りませんが、そうあってほしいものです。かつて「交通戦争」といった言葉が事故多発を表していました。


いまは「がん戦争」の真っ最中といっていい。個々人の生活習慣病が一因というような矮小化をせずに、がん細胞の退治のために真っ向勝負してほしいものです。