退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

メダカの水槽と海洋投棄

 水ぬるむ侯、飼育するメダカの産卵期を迎えますので、水槽を掃除しました。


 メダカが群れて、生き生きと泳いでいる光景は、見ていて気持ちが和らぎます。ところが、ガラスの水槽はよごれやすい。エサの残りやフンや種々のコケ類がガラスにへばりついて、せっかくの鑑賞が台無しです。メダカも汚れた水質を嫌っているようです。


 この水を透明感のあるクリーンな状態に保つのが、魚飼育の大きな問題です。フンやコケを食べる掃除屋のエビを入れたり、エアーレーション、フイルターを設置します。それでも、頻繁な水換えが必要です。水換えはメダカに水質変化のショックを与えないために、用意した日向水を三分の一くらいずつ換えます。


 いろいろ試してみましたが、今回たどり着いたのは、「珪酸塩白土」という土を水底の敷き詰めることです。この土は日本では青森県八沢木地区でしか産出されない希少土です。商品としては「ミリオンA」と「ミリオン」があり、前者は小石状。後者は砂状で後者の方がずっと安い。


 袋の裏に化学分析された土の成分が詳しくのっていますが、要するに農業、畜産、園芸、養魚、土壌改良など多目的に多機能な有効成分が多いという。植物の成長促進剤や土壌の改良剤は大手の企業がいっぱい売っていますが、この「ソフト・シリカ社」の「ミリオン」はあまり知られていない。いや、ぼくだけが知らないのかな。


 水槽の底の大磯砂の下に三つかみほどの量のミリオンを敷き詰めて、水槽の水を満たしたら、たちまち水が白濁しました。二日後には、沈殿もしくは溶解したのか、水がきれいに澄んできました。


 避難させていたメダカを戻してやると、元気に泳いでいます。一週間後は、これまでにない透明度のあるピカピカの水になってきました。メダカも大丈夫の様子。塩白土が溶けたといえ、総量三つかみの「珪酸塩白土入り」の水に変わりありません。


 この作業をやりながら、例のフクシマの「放射能汚染水」の海洋放棄のことを考えました。いくら40分の1に希釈(薄める)したと言っても、40倍の放射能水を流せば、総量は変わりません。希釈という言葉に誤魔化しが含まれています。アソウが「飲めるんじゃない」と言っていますが、「率先して飲んでもらいたい」。


 また、雨水は川や池から海に流れ、海から水蒸気で上昇し雲になり、雨水となって舞い戻ってきます。中学で習う大気のサイクルです。極微量の溶解分は、その循環に乗って戻ってきます。放射能入りの雨になります。


  貯蔵水は、30-40年間、垂れ流します。そうしなくては、処理が終わらない計算だといいます。一方で、その間に新たな汚染水が”生産”され続けています。まさに天にツバする愚行です。


 スカ政権やNHKは「放射能汚染水」を「処理水」と言い換えています。「敗戦」を「終戦」、「武器・兵器」を「防衛装備」と言い換える、目くらまし語法です。


 確かに世界の原発も「処理水」は海洋に投棄しているとNHKは数値を上げて報道していましたが、いまのところ、世界の原発は正常です。大惨事をもたらした「事故原発」でありません。「溶けた燃料棒」や「デブリ」(堆積物)などに触れていない水が多核種除去施設(アルプスと呼称)を通して「処理された」ものです。


 この限りでは、いまでも国内で稼働している原発からも出る排水と同じです。この排水にはアルプスでは処理しきれないトリチウムが含まれています。


 一方、フクシマのは、いまこの時点でも、事故によって放射能まみれの「溶けた燃料棒」や「燃料デプリ」(堆積物)が大量にあり、事故から10年たっても、現況はどのようになっているのか、アクセスすることも、取り出すこともできないのです。


 その核装置を冷却するために流されている水は、燃料棒やデブリに直接触れた正真正銘の「放射能汚染水」なのです。猛毒のストロンチウムやセシウム135 ,セシウム137,要素129などの12種の放射性物質はアルプスでは除去できないのです。政府は今回の投棄はトリチウム水だけの放出のように言っているのは、誤魔化しです。


 いま貯蔵されている「放射能汚染水」の七割(経産省のホームページ)は、とりあえず流出を防ぐために「処理されず」に貯蔵されているものです。世界の原発が排水している「処理水」」とは決して同列ではないのです。ヨウ素129の半減期は約3570万年、セシウム135は約230万年後とされています。むろん、スカもアベもアソウも責任が取れる話ではありません。


  この時期に汚染水の海洋投棄を表明するのは、アベが五輪開催誘致で発言した「アンダー・コントロール」を国際社会に裏付けてみせる政治判断だろう。漁業関係者はじめ国民へ血も涙もない、無情のスカ政治です。


 海は世界と通じています。海は人間の愚行を捨てるゴミ箱ではありません。ながーーーい目でみると、我々は徐々に自滅の道を歩んでいます。メダカの水は取り換えできますが、「投棄された放射能汚染水」は取り換えしがつかないのです。


 汚染水のなかのプランクトン→小魚→中魚→大魚という食物連鎖、その過程でしだいに凝縮する放射能物質を考えただけでも、魚は口にできません。風評被害と称して漁業関係者に巨額のカネを補償して済む話ではありません。


 ぼくは「海洋投棄反対」です。今となれば、陸上で永遠に「貯蔵」を続けてください。放射能汚染水を貯蔵したタンク群は、いずれ人類の墓標になるでしょう。


 人類は放射能を無毒化する技術を持っていません。
 自然は放射能を浄化する力がありません。
                  原子力研究者 小出裕章さんの言葉です。

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