退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

言い換え

 若いころ、「トルコ風呂」というのがありました。ぼくには縁のないものでしたが、、、。


 「蒸し風呂付アカスリ特殊浴場」の別称でした。中で行われていることを知ったトルコ人留学生や在日大使館が、国辱だと抗議、その筋の業界は、ごめん、ごめんとばかり、こんどは「ソープ・ランド」と言い換えしましたが、どうも馴染まないのか、いつの間にか、「フーゾク(風俗)」と呼ばれて、今日にいたっています。その結果、文化や世相を意味する本来の「風俗」という言葉が、非常に使いにくくなっています。


 20数年まえ、政府は「縦割り行政の弊害を是正する」とかを大義名分に中央省庁の再編を行いました。大蔵省が財務省、通商産業省が経済産業省、厚生省と労働省を足して、厚生労働省、文部省と科学文化庁を足して、文部科学省と言い換えた、あれです。今ごろになって厚生労働省の仕事の範囲が広すぎて、、、とか議論して分割案が浮上しています。国民は、相変わらず縦割り行政の不合理、不能率に悩まされています。


 では、なんで言い換えるか。簡単です。政府や役人や関係筋の人たちには、仕事した(ふり)"実績"が、ちゃんと名前に残るからです。「オレのときに財務省に言い換えたんだな。あれでアメリカと同じになったんだ、あーん」といったセリフが吹き出しにありそうな感じ。名前を変えると、実体をごまかしたり、目くらましをする効果があります。


 最近、自民党は「敵基地攻撃能力」というミサイル導入や戦争体制に関して、「反撃能力or反撃力」と言い換えることにしました。この能力導入に熱心な元首相のアへや、その弟のキシ防衛相の発言によれば、「敵の基地を攻撃するほか、敵の中枢、防衛施設など指揮統制権を持つところを攻撃する能力」といいます。指揮統制権があるところといえば、トップがいる場所ではありませんか。


 いうまでもなく、「戦争しません」「軍隊はもちません」と明記した憲法のどこを、どう叩いたら、そんな発言が出るのか、あきれて果てた話です。特にアへは「核兵器を爆撃機で中枢に落とす」ことまで講演で述べています。


 こちらが名称を変えて、そういう能力をもてば、あちらは、それを上回る能力向上をめざすでしょう。予想される当然の対応です。アへは抑制的な「武器輸出(禁輸)三原則」を「防衛装備移転 三原則」と言い換えて、事実上、制限を解消しました。


 アへの軍事大国願望は、この国に再び過ちを繰り返したくてしかたがないようです。おじいさん(岸信介A級戦犯→CIA工作員→元首相)が先の大戦の開戦詔勅に署名して、国民と国土を破滅させた愚行を「聖戦だった」と賛美している化石のような人物です。


 その前には、核兵器の共有論まで持ち出す下劣さです。核兵器による脅し、言ってることは、狂気のプーチンと変わりないじゃーあーりませんか。 ヒロシマ・ナガサキの教訓がツメの垢ほども身についていない危険人物です。このような無恥無知の男が自民党の最大派閥の会長というのですから、おそろしい。山口県民は、この人物をぜひ落としてもらいたいものです。


 ところで先に大戦と言えば、「憎き鬼畜米英の言葉は敵性語だから使うな」という愚かなたくらみに国民は夢中になりました。「ストライク」を「よし」と言い換えた野球用語がよく知られていますが、調べてみると、言い換えは、あらゆる分野にわたりました。たとえば、ハンドバッグは「皆入袋」、パーマネントは「電髪」、ハンカチは「手布」という具合。


 これは、わかりますか。「油揚肉饅頭、あぶらあげにくまんじゅう」、あるいは、「辛味入汁掛飯、からみいりしるかけめし」。前者はコロッケ、後者はカレーライスだそうです。なんとも、アホらしい言い換えです。


 ニックキ敵ををやっつけろと愛国心や忠誠心をことさらに煽る人々、それにやすやすと同調する国民、しかも、この手の連中は同調しない人、批判的な人たちを「非国民」と冷たく排斥したのです。こういうことを、学校の先生や隣組のおっちゃんや婦人会のおばさんが率先する国民性なんだということを、心しなけれなりませんね。


 もうすでに「ロシア不愉快、怪しからん」と抗議がきて、東京のどこやらの駅のロシア語表示が、隠されてと伝えられています。八つ当たりする連中がいるんですね。ロシア語や民間のロシア人には、なんのツミもない。


 天皇の軍隊、つまり「皇軍は不敗だ」という神話を担いだ手前、不都合な真実はすべて改ざん、捏造されて、兵員が全滅しているのを「玉砕」と美化したり、「撤退や退却はありえない」として「転進」といい、「敗戦」を「終戦」と言い換えた愚かな歴史があります。


 とりわけ、国防とか安全保障の問題は、日米同盟上の約束とか、軍事上の機密とかと称して、本当のことを国民に知らせようとはしません。敵が迫っている、襲ってくると危機感を激しく煽るのが、好戦派の常套手段です。狂気のプーチンは、ウクライナ侵攻まえの演説で「特別軍事作戦」と「戦争」をまるで演習のような言い換え言葉を使い、侵攻しています。


  改めて、言い換え言葉を作って目先をごまかそうとしている政党と政治家に気をつけましょう。誤った指導者を担ぐと、世界がめちゃくちゃにされる現実を、ぼくたち今、見ています。


 夏の参院選は、人任せしないで、ぜひ投票にいきましょう。

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