おしっこ測定
「これなら薬を一錠,減らすことにしよう」
泌尿器科の先生が、きっぱり言います。
めったにない朗報じゃあーりませんか。
ぼくは前立腺肥大の症状がありますので、三月ごと通っています。
前回の診察のあと、次回は、尿流測定検査、つまり、おしっこの勢いや出方、それと採血をします。おしっこをできるだけ我慢してきてくださいと指示されていました。尿意が近く、夜間たびたびトイレ通いとうのは、この病気の症例の一つです。それにしても、おしっこの勢いをしらべるとは!? 老人になると、未知の経験をします。
その当日の目覚め、いつもならトイレ直行なのに、気合をいれて我慢、我慢、上の空の運転で病院へ。始業まえ15分になって、我慢が限界に。看護師さんにおしっこの勢い検査があるのだが、「もうギリギリ、悶絶しそうだ」と泣きを入れました。
「いま出すと、次はだいぶ先になるわね」と看護師。
「そりゃそうです」
先生はまだきていないと、困った顔をしましたが、すぐに処置室に連れていってくれました。
処置室といっても、水洗便器があるだけで、普通のトイレと変わりがないようです。
「立ってする?、座ってする?」と看護師。
「立ってします」
「セットしたから、終わったら、記録を持って受付へ来て」
立ち去る「看護師さん」に最敬礼。
(機転を利かしてくれた看護師さんに感謝、急に”さん付け”です)
やっと苦悶の時間から解放されました。膝から力が抜けるような感じ。終わって、水を流すと、便器の後ろの貯水槽の上にあった小さい箱から、ジリジリと記録紙が流れてきました。レシートの出る器械とそっくりです。
どうやって勢いを検査するのか、どこかに写真センサーでも備えていて、動画を取られるのか、それなら恥ずかしいなあと思案していましたが、レシートふうの紙が出てくるとは、不思議。
記録紙をみると、「ためらい時間」」とか「排尿時間」などが記入されているほか、曲線グラフが描かれています。どういう仕掛けで、こんな記録が取れるのか、まったく賢い器械があるものです。
(参考、正常な測定結果例、Google画像検索から引用しました)
このあと、先生のもとで、ベッドで下腹部を超音波で検査したり、ギュっと抑えられたり。この検査は残尿量や器質異常を調べるものでした。
そして、冒頭の先生の言葉です。尿の流出を示す曲線グラフは、かなり高い山なりを描いていて、途切れることもありません。先生は「若い人みたいに元気がいいおしっこだ」とほめてくれます。残尿もないし、前立腺がんの心配もないようだと念を押してくれました。
このトシで、おしっこをほめられるとは思いもしなかった。ま、何にしろ褒められるというのは、うれしくないはずがありませんが、ちょっと疑問符が頭に浮かびます。あれだけ必死に尿意をこらえていたのだから、出るときは勢いがいいのは当然ではないか。それでも勢いが悪い人もいるのかしら。よくわかりませんが、先生に尋ねるのはやめました。
生活習慣病のデパートみたいな身体です。クスリはだんだん増えて、いまや朝に11錠、昼と夕にそれぞれ4錠の薬剤を服んでいますが、一錠でも減るのは初めて、です。久しぶりの、なんという「快挙」であることか。今なお改善する兆しが、我が身にあるのです。世の中、気づまりなことが多いなか、せいせいする出来事でした。
祝杯です。夜はゆっくり、時間をかけてサッポロビールをたくさん飲みました。サッポロビール黒ラベル」は、数あるビールの中で、ぼくが一番気に入っているブランドです。コクがちがいます。勢いよく、ほとばしる尿のもとでもあります。
サッポロよ、今夜も、ありがとう。