退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

善意の寄付

 困っている人、弱い立場の人のために、心づくしの寄付をする人がいます。でも、寄付したお金の行方が、どう有効に使われているか、とても気になることですね。



               


 国連機関で唯一、母子支援のためにあるのが、ユニセフ(国連児童基金)です。ときどき、また最近も、ネット上で、ムダ使いだとか、偽善だとかの悪意のある意見をみます。ぼくは日本ユニセフ協会の、ほんのささやかな寄付支援者なので、多少、内情について理解してます。


 最初に、寄付集めに限らず、なんらかの活動するには、運営組織が必要だということを理解されていない人がいることを指摘したいと思います。善意の寄付集めといっても、世界的な、あるいは、国内規模の活動をするためには、人、モノ、カネ、つまり、人も、施設も、運営費も必要なのは、いうまでもありません。


 ユニセフ組織は、大きなピラミッド型です。簡単にいえば、こうです。本部はニューヨーク。ジュネーブに欧州本部、コペンハーゲンに補給資材センターがあります。先進国の主な国に直轄事務所(例、ユニセフ東京事務所)があります、このほか、NY本部と「協力協定」を結んだ各国のユニセフ協会があります。日本ユニセフ協会は、その一つです。その下に「協力協定」したと各府県単位のユニセフ協会(例、大阪ユニセフ協会)が存在します。


 ボランティァだけでは、とうてい組織は動かせません。ユニセフは営利団体ではありませんが、組織は、運営団体なしには成り立たないのです。よくこの点が誤解されます。寄付金はみんな職員やボランティアの給料や謝礼で消えているんじゃないか。寄付金の使途が不透明で、職員の私腹を肥やしているているのではないか、という疑念があります。


 むかし、赤い羽根募金で横領や日本赤十字社で着服が明るみに出たことがありましたし、天災による被害救済のための街頭募金が、どこの団体なのか、カネの収支報告なんかを見たことがない、、、というような不明瞭な事案がありますので、疑心がわくようです。 


 ユニセフの組織としては、そうした不正は聞いたことがありません。NY本部と国内ユニセフ協会との間で、寄付金について、総額の最大25%までは国内ユニセフの寄付金集め活動、広報活動、施設運営費や人件費に充ててよいとされています。その内容は、暦年の収支報告を支援者に報告のほか、ネット上でも下記のように公開しています。



日本ユニセフ協会のホームページから引用しました)


 2021年の日本の場合、寄付金総額の82.6%をNY本部へ送金、残りの中から2.3%が、事務運営費と60数人の人件費に充てられています。各府県ユニセフ協会への助成金も残りの中から出ています。この種の福祉慈善団体としては、おそらく最高の透明性があるのではないかと思っています。


 ユニせフには著名な人々が役員、評議員に名前を並べていますが、すべて名誉職で、無償で協力しています。世のため人のためと働くボランティアは、交通費が出ることがありますが、ほぼ無償です。ぼくもボランティアに参加しましたが、中高年の女性が多く、正義感とか、ヒューマニズムに富む人が多く見られました。お金に余裕がない人は、時間を提供すればいいのです。


 よく知られている黒柳徹子さんは国連本部の親善大使、アグネス・チャンさんは日本ユニセフ協会の親善大使しています。途上国への視察などの渡航費は協会持ちですが、日常的な支援活動は無償で行っていると聞いています。オードリー・ヘップバーンさんも親善大使でした。有名人を起用するのは、ユニセフ活動へ理解を深めてもらいたいからでしょう。


 ただ、NY本部に渡った寄付金が、どのような流れで途上国の母子支援に回っているかまでは、知りませんので、そこで無用の投資や不正が介入する余地があるかもしれませんが、この点は、信頼できる組織と信じるしかありませんが、、、。


 ユニセフは、もともとは第二次世界大戦のあとの荒廃した欧州の国々の子どもたちへの緊急支援のために発足、戦後の日本の子どもたちもミルク、衣料が贈られたりして、年配の方には記憶があるはずです。すこし状況が落ち着いてから、ユニセフ活動の対処先が、いまのようにアフリカなど開発途上国の母子救援に向かっています。戦争や紛争抑止になんの力も発揮できない国連安保理なんかに比べると、ユニセフは、意義深い活動をしているといえるでしょう。


 ユニセフのような存在がなくなるような、公平で豊かな世界が望ましいのは、いうまでもありませんが、きれいな水も飲めず、栄養不足のうえ、予防注射を受ける機会がないため、たとえば、5才までに死亡する子どもたちが一年間に500万人、6秒に一人もいます。下痢、栄養不良、マラリアなどで亡くなります。そういう現実がある限り、ユニセフは存在意義があると思います。多くの人の善意を期待せざるを得ないのです。


 ただ、ユニセフに限らず、こうした活動は、いわば対症療法です。貧困を生み出す構造的な経済格差、難民を生み出す内戦や紛争、飢饉や干ばつを生み出す現象の抑止と言ったような根本的な解決策には至らないのが、残念ですね。ウクライナ戦争で、多数の孤児が発生しつつあります。トルコ・シリア大地震でも、そうでしょう。人間の愚行を含め、災厄がつきない地球です。


 ウィキペディアによると、俳優で歌手の杉良太郎さん(伍代夏子さんの夫)は、篤志家で知られ、ベトナム孤児150余人を里子にしたり、刑務所や自治体などに巨額の寄付を重ねています。それについて,杉良太郎さんは、こういっています。


「ああ、偽善で売名ですよ。偽善のために今まで数十億を自腹で使ってきたんです。私のことをそういう風におっしゃる方々も、ぜひ自腹で数十億出して名前を売ったらいいですよ」。


 寄付もしないで、慈善活動をいじる連中に杉良太郎さんは、”一刀両断”しています。

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