退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

寝正月

  「一富士二鷹三茄子」
(いちふじ・にたか・さんなすび)を初夢に見ると、縁起がいいとの言い伝えがあります。ほかには七福神が乗った宝船の夢とか。どっちにしても、レトロな夢ですが、宝船の方はわかりやすいのです。しかし、茄子がなんで目出度いねん?。


 思うことはおんなじとみえて、こじつけとみられる解釈があります。富士山は日本一、鷹は鳥の王者、茄子は「事を成す」に通じると納得している人が多いようです。


 暮れに読んだ作家・歴史家の半藤一利さんの『老骨の悠々閑々』(ポプラ社刊)によると、これは日本三大仇討のこと。「一富士は」富士の裾野での曽我兄弟の敵討ち、「二鷹」は忠臣蔵のこと、鷹は主君浅野家の紋所、「三茄子」とは荒木又右衛による伊賀の鍵屋の辻の決闘をさしていて、「事を果たして名をなす」からきていると。


 半藤さんも「ほんとかなあ」と結んでいますから、これまた小さく「諸説あります」の部類かな。江戸の武家社会では忠義を尽くすことが人倫の最高善だったから、そんな夢をよしとしたのだろうか。庶民には縁遠い敵討ちですが、お武家様を真似ておれば、安泰とばかり広がったのかな。


 会社勤めを離れて20数年になりますが、いまも夢をみるのは、仕事上の四苦八苦のこと。ミスは許されない、分秒を争う時間帯の焦燥と切迫感には、血尿を出す同僚もいましたね。
従ってみる夢は、決まって悪夢。まあ、「締め切り」があるような仕事は、後々、体に良くないですね。


 元日夜は恒例のウイーンフィルハ‐モニーの「ニューイアーコンサート2021」のTV生中継。今回は史上初の無観客演奏会。指揮はイタリアの巨匠、リッカルド・ム‐ティで、ヨハンストラウス父子の作品を中心17曲、3時間、楽しみました。


 恒例の締めの曲「ラデッキー行進曲」では、いつもの観客席からの絶大な拍手がありませんでした。この点も含めて、リッカルドさんは「ラデッキー行進曲はもともと譜面には拍手がありません」と笑いながら説明しました。


 さらに「音楽はコロナ禍を封じ込める力はありませんが、コロナ禍で暗くなった人の心を豊かに、希望の光を与え、心の健康を与えます」という趣旨のメッセージを送っていました。御意ですね。


 彼氏は当年80才とのこと、端正な額に浮き出す汗を吹き飛ばすタクト。その音楽にかける熱意と体力には畏れ入りました。


 気分よく美しい旋律を聴きながら、ビール、ワイン、焼酎と飲み継いだせいか、夜中に腹痛、なんどもトイレ通いをする始末。初夢どころではありません。2日は、完全にグロッキーで、文字通りの寝正月になりました。


 いくつになっても、懲りない愚行を反省しきりの三が日でした。

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