退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

大根

  秋に例年より遅れて植えた大根が、七草がゆに間に合いました。年初の歓びです。


 昨年は連れ合いが病気になり、貸し農園はほったらかししたので、夏草がぼうぼう。もう借りた農地を返そうかと思案したあげくに、がんばって開墾し、一か月遅れの10月上旬に大根の種をまきました。


 このことは、以前にも書きました。連れ合いがプロパーの畑仕事を、ちょっとだけ手伝った話です。

       

 タネまきをしてみると、気候が気になります。寒いの、雨が降らないの、舞い降りるカラスなど、畑のことが気がかりになります。  


  2週間後に見に行くと、新しい命が誕生していた。植物の生命力というのは、すごい。牛糞と米ぬかを十分に漉き込んだので、栄養たっぷりの土壌を吸収している。


 米ぬかはホームセンターに自動精米所があって、「自由にお持ち帰りください」とあるのを利用させてもらっています。大き目のレジ袋一杯くらいは、行くたびにもらえて助かります。


 若葉が開いている場面を見ると、少年時代に感動した映画『エデンの東』 を想いだします。 愛に飢えた青年、 ジェームス・ディ―ンが父の歓心を買おうと、広大な畑にレタスの種をまき、いっせいに幼い葉をつけたとき、畑に寝転がって喜ぶシーンです。


 しかし、偽善者の父は戦時高騰を見越した投機野菜なんか卑しいとして取り合わなかった。親から見放された青年の悲しみを巧みに表現したディーン。実生活でも自動車事故でわずか23才で夭折して、伝説の青春になりました。死後上映された『理由なき反抗』、『ジャイアンツ』とともに未だにお気に入りの俳優です。


 それはさておき、しばらく見に行かなくても、大根はどんどん成長します。連れ合いのやることを見様見真似で、根元の土を盛り上げたりしましたが、根菜のいいところは、軌道にのると、ほとんど手間がかからないこと。玉ねぎや、じゃがいももそうです。

85日にもなると、土壌が見えないほど、いちめんの生き生きした大葉が覆いかぶさり、素人目にも、旨そうな大根ができつつあることがわかります。緑濃い葉の行列は、豊かな気分や達成感を味わえます。営農者たちの歓びの一端を実感します。



 正月明け、試しに一本ぬいてみると、よく太っているが、丈は短い。ずんぐりむっくりの大根だった。品種のせいか、土が堅かったのか。とはいえ、ひいき目にも。みずみずしく美味しそうにできました。


 連れ合いは、今年は野菜が安く、うちの大根の二倍くらいある姿のきれいな大根がスーパーでは一本98円で売られている。これでは大根を作ってる人が可哀そうだといいます。


 趣味の菜園づくりでも、営農者のご苦労はよくわかります。連れ合いは山里の出ですから、生産者の気持ちと台所からの気持ちと入り混じって複雑です。


 「安くていいもの」を工業生産物でないものに過大に追求をすれば、いずれ生産者は割が合わなくなり、成り手がなく衰退するだろうな。門外漢のぼくでも、そう思います。


 7日の七草かゆには、もちろん、この手作り大根を入れました。スズシロ(大根)とスズナ(蕪)の二つの味がある大根でした。コロナの邪気を払ってくれるかな。


 それより先に自称「ガースー」さんを払った方が、話が早いような気がしますね。

×

非ログインユーザーとして返信する