退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

嘆きの高齢者ドライバー

 全国の高齢者でクルマを運転する人たちは、自分が責められているような気持になったに違いない。


 大阪の89才の運転者が、買い物先のスーパー店頭でマイカーを誤操作、自分の妻を含む3人死傷の暴走劇を演じたからです。


 この事故現場がいつも通っていた病院の近くとあって、馴染み深いだけにショックをうけました。池袋で母子はじめ12人を死傷させた多重衝突事故の90老が頑迷に非を認めない、往生際の悪さとあいまって。高齢者よる事故が問題視されていましたから、またか。 


 日頃、ぼくに免許返納したら、という圧力を身内から感じていますので、こうした身近な事故は困ります。連れ合いは、何度もこの事故を話題にします。けん制球を投げているのです。近くに住む長女はやってきて「ちょうど運転やめるきっかけだ」といいます。


 この間、受けた警察の「認知機能検査」の結果は0点だったと言っても容赦しない。「それと、運動神経とは違う」、「事故起こすまでやめないのか」ときついことを言います。身を案じていくれているし、人様を巻き込んだら取り返しがつかない、ということもわかっているのですが、、、、。


 一般論でいいますと、警察庁の交通事故統計からみても、高齢者が第一当事者(加害者)になる事故は、横ばい、または減少気味です。免許人口の年齢別事故数でも、免許取得者10万人当たりの事故率でも2,30代の方がずっと多いのです。下の図表をご覧ください。


                     (令和元年調べ、警察庁交通局ホームページから引用)



 なぜ、高齢者の起こす事故だけ、これほど非難され、目の仇とされるのか。それは多分、警察庁が高齢者運転者の事故の起こし方に「高齢者特有の要因」があるとみているからでしょう。つまり、加齢に伴い判断力や記憶力の劣化して運転技術に瞬間的な運動神経がついていかなくなっている。それが誤操作に通じているとみなす見解です。


 事実、高齢者事故の要因は、ハンドル操作、ブレーキとアクセルの踏み間違いが、事故の
30%を占めており、他世代全体の12%とは著しく違っています。他世代では、前方不注視や安全確認不足が目立ちます。こうした事実に新聞、TVなどマスコミが同調して、高齢者による死傷事故をセンセーショナルに報道するから、余計話題になります。


 しかし、興味深い指摘もあります。池袋事故の90老も今回の89老も運転車は、トヨタのプリウスだと指摘する識者の意見があります。クルマ業界の関係者ではないようです。


(Google写真検索から引用)


 プリウスには、「中立ポジション」の電子式シフトレバーが採用されています。中立ポジションとは、どのようなシフト、つまり、バック(R)にでも、ドライブ(D)にでも、ブレレーキ(B)にでも、シフトを動かしたら、すぐに中央の位置(N=ニュートラル)に戻る仕組みのことです。したがって、運転者にはシフト変速位置が見えていない。


 従来の車ではシフトレバーをD(ドライブ)などに入れると、そのシフトの位置で固定されることがほとんどです。もちろんプリウスも前方のモニターを確認すれば、それはわかりますけれど、「一点可視化」より「二点可視化」の方が安全です。そうでない他車から乗り換えたり、初心者にはそうとう慣れが必要と思われます。


 誤解されると困りますが、いわゆる欠陥車といっているわけではありません。プリウス車のシフト構造については、ネット上の車情報には、操作上のいくつかの問題が掲載されていますが、これが運動神経が衰えている高齢者にとっては、どうなのか、といったような視点からの報道は、マスコミからは出てこない。トヨタへの忖度かな。暴走を止める余地が、クルマ側にもあるかもしれないと検証してもいいと思います。


 アメリカでは80代の70%は、日常的に運転しているそうだ。クルマがないと社会生活ができないのです。ギネス記録によると、アメリカ人、フレッド・ヘイルさんは、なんと105才のとき運転免許を取得し、113才で肺炎で亡くなるまで運転していたといいます。クルマとともに暮らしがあるということを物語る逸話です。取る方も取る方ですが、免許を認める方も、たいしたもんです。


 米アップル社は、早ければ2025年には、ハンドルなし、ブレーキ操作等なしの自動電動クルマを発売すると最近のニュースが伝えています。遅くても30年までに、いう見込みだそう。こうなると、乗客です。運転者という概念がなくなりそうです。


 クルマは、メカ的には成熟製品なので、異種事業体でも進出可能、Ai(人工知能)が安全に運転するクルマの登場は、そう遠くないと見込まれます。


 人手不足の現在、タクシーや物流業界のトラック輸送などには、高齢の運転手がたくさんいるそうだ。そのうち、看護師、介護職に続き、ドライバーも外国人技能者として受けいれなくては流通経済が回らなくなりますよ。サプライチェーン・ストップと同じ事態です。


 今のまま、高齢者をただ排除する風潮はいただけない。宇宙ステーションにシャトル・ロケットで行ったり来たりする技術があるだから、クルマの安全走行を解決することくらい出来ると思いたい。それこそ官民協業の国策であっていい。そうなれば、高齢者運転の問題点は大幅に解消されます。


 それまで、お前はどうするのかと問われたら、そのころは、もうこの世にいない。いや、これは冗談です。本当は、もしばらくは運転を続けたい。細心の注意をして。

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