退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

プーチンもどき

 プーチンがウクライナを侵略しました。攻撃前には「核保有の最有力国だ」と威嚇していました。成り行きが最悪の場合、第三次世界大戦につながりかねない21世紀最初で最大の危機です。たった一人の独裁者に世界が振り回されています。


 逃げ惑う老女や泣きわめく子どもたち、着のみ着のまま徒歩やバスで国外に逃げる数十万の避難民たちの群れ。TVが可視化して伝える悲惨な場面は、「いつか来た道」をはじめ、戦後もずっと起きたアジア各地の戦争と重なります。犠牲になるのは、いつも無名の国民です。


 問題なのは、この独裁者も一応、民主的な選挙によって、選ばれています。あのヒトラーもそうでした。多数派を形成するまでは選挙で民意をえていましたが、都合のいい法律をどんどん作り、「合法的」に全権を掌握すると、正体をあらわしました。それまで英米諸国でさえ、ヒトラーを「合法政権」であるがゆえに融和的に傍観していました。その失態が第二次世界大戦となりました。


 北朝鮮や中国のような例外国がありますが、いまの国家指導者は、民主的な選挙で選ばれています。しかし、指導者の資質しだいによっては、選挙でえた支持を逆手にとって、権力を最大限まで拡張し、好き放題に走れます。民主的な手続きを踏んで選ばれた指導者が、民主的な人物とは限らないのです。人物とそいつが属する政党の野心をしっかり見極めなければなりません。


 議員内閣制のこの国は、直接指導者を選べませんが、与党内の思惑しだいで、無能な人物が首相になる余地があります。歴代最長の政権を維持したアベ元首相は、その例です。そもそも大学の恩師から「裏口卒業」といわれ、「画一的」を「ガイチテキ」、「背後」を「セイゴ」と読んだりするような人物が国政や国際政治・経済にはめっぽう見識があるなんてことは、ありえないのです。


 ウクライナ侵攻について、アベ元首相は、さっそく本音を現わしました。27日のフジTV場番組で「アメリカの青年たちが血を流しているのを黙ってみていていいのか」、「日本も核シェアリングを議論すべきだ」と核武装化を煽りました。


 (注: ウクライナ戦争に米兵は参加していない、血も流していない。アベ元首相はお得意のウソをついて、日本の青年たちに忠誠心の高揚を煽っています。核シエリングというのは、アメリカの核兵器を日本国内にも配備してもらい、日米共有共同で運営しようという計画。実際には、アメリカにキーを握られますし、配置すれば一番の標的になります。)


 アベ元首相は8年間、国会答弁や長崎・広島の原爆忌でのあいさつで「非核三原則の厳守」を語ってきましたが、彼にとって、その場を穏便にすませる「お題目にすぎなかった」ことを、核シエアリング発言は物語っています。彼の宿願である改憲の最大の狙いが「緊急事態条項」の明記にあります。ヒトラーが握った「全権委任」と同じです。その先に天皇を頂点とする軍国国家があります。


 アベ元首相は、権力者の腐敗を見せつけてくれました。「モリ・カケ・さくら・クロカワ・カワイ」案件などは、その一つ一つが、明らかに立法軽視、行政私物化、血税私腹、司法懐柔、民主主義手順の悪用といったことでした。かろうじて公の場では「非核三原則」と不本意なことを口にしてきたのは、平和憲法が担保されていたからです。


 権力者が戦争を起こしたり、国民の生活を惑わしたりするのは、権力者自身が力の誇示やメンツの維持に躍起になっているときです。誰のためでもありません。自存自衛などという大義名分は後付けです。


 西側諸国の堅い連帯で、プーチンに最大限の金融・経済制裁を加えますと、西側もそうとうな返り血を浴びるでしょうが、ソ連崩壊時のように食料品店の棚が空っぽのままという困窮状態が再来されたら、国内事情が急転するかもしれません。


 わが国にも、怪しげな小さなプーチンや、プーチンもどきがいっぱいいます。今夏の参院選にむけて、せめてプーチンを反面教師に「戦争だけは決してやらない」候補と政党を選ぶことにしたいですね。このことは先の大戦で亡くなった同胞330万人と苦痛と損害を与えた関係国民への責務です。

×

非ログインユーザーとして返信する