退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

契約の自由

 生鮮品やシャツを買うなら、品定め、納得して、代金と交換した時点で、契約が成立します。車や家屋ともなれば、書類を交わして契約が生じることが多いです。誰からも干渉されることがなく、口頭でも書面でも、法律で契約の自由が保障されています。


 現代の経済社会では、どのような形であれ、双方の納得ずくという点が契約の要点ですよね。ところが、NHKの受信料というのは、違うのです。受信設備 (以下テレビといいます)を買ったら、NHKを見る気がなくても、NHKが見られないような装置をつけても、受信料を払わなくてはならないのです。(少し長くなりますが、お読みいただければ幸いです)


 NHKは、政府機関でない特殊法人という存在です。放送法という法律の第64条に「テレビを持った場合、NHKと受信契約をしなければならない」との規定があります。さらに総務大臣の許可を得て定められた日本放送協会放送受信規約第5条で「放送受信料を支払わなければならない」と義務づけられています。


 但し、この「しなければならない」という規定には、罰則はありません。まあ、努力を促すという表現で、法律用語では「訓示規定」とみられています。受信料徴収は税金のような強制力はありません。


 しかし、NHKは政権に偏ったニュースしか流さない、番組が民放と似たようなものだから、NHKは見ないと言い張っても、テレビを買っただけで、受信料を払いなさいという仕組みになっています。これは、どう考えても、おかしな話じゃーあーりませんか。契約の自由は、どうなっているの?と思いますね。 


 そう考える人が多くいまして、あるテレビ所有者が、NHKを相手取って、受信料徴収は違憲だとして不払いで最高裁まで争った例があります。


 それがNHK受信契約等請求事件判決(2021年12月6日 最高裁大法廷)です。それによりますと、最高裁は受信料の徴収は、合憲であるとしています。その主な理由は、二つあります。一つは、NHKだけが公共の福祉のため、あまねく日本全国で見られる。二つ目は、NHKは民放と違い、営利を目的としない、広告も禁止されていて、公共的性格がある、、、、といいます。


 この判決は、放送・通信技術が飛躍的に発展している現代の実情を知ってか知らずか、NHKが放送機関で一つしかなかったころのままの認識です。時代遅れの裁判官たちの古臭い頭で政府権力におべっかした内容です。デジタル時代とは思えない認識です。


 一つめの理由は、もうとっくにNHK独自のものでありません。民放はキーないし準キー局の番組発信が全国地方局に流されてカバーしています。まして民放BSなら全国あまねく受信可能です。インターネット(通信)でスマホでもiPADでも見られます。パソコンでユーチューブやアマゾンビデオも観られます。こうした機器は、いまはテレビを凌いで見られています。公共の福祉に貢献しているのはNHKだけでありません。


 ぼくは運転中、カーナビについたテレビを見ますが、これをNHKはどうやって把握しているのかな、していないでしょう。取れるところから取るというやり方にすぎません。


 二つ目は、NHKが広告をとらないのは、視聴者からの要請で始まったものでありません。政府側の方針にすぎません。研究者によると、独仏伊豪スペインなどの国営放送は広告を流しています。アメリカにも小規模の公共放送がたくさんあって、どれも無料で視聴できるそうです。これらの公共放送は,基金や寄付で運営されています。広告をとらないから、有料だという主張は破綻しています。


 NHKが「みなさまの公共放送」と自称するのは勝手ですが、「みなさまのもの」なのに、特殊法人NHKは、予算も人事も総務大臣の権限下にあり、さらに放送法第4条で「番組内容が公平の原則に反した放送局(民放も含みます)に対して停波措置(つまり放送免許の取り上げ)ができるとあります。生かすも殺すも政府の腹しだいとなっています。


 アへ政権のとき、タカイチ・サナエ総務大臣が、一つの番組を念頭に電波を停止しますよとほのめかす発言をして、放送局を脅しました。もちろん、この場合の公平の原則とは、自公政権に都合の悪い放送をするな、という意味合いですから、笑ってしまいます。


 そのうえ先述した規約5条で受信料の価格決定まで総務大臣の権限のもとになります。予算、人事、受信料の金額、そして停波措置とたくさんの人質をとられて、NHKは、国民の皆さまよりも、時の政権の方を向いた広報機関に成り下がっているのです。決して自主独立した放送局ではありません。


 ただ、最高裁判決のなかで、注目すべきことがあります。やはり、契約の自由という点に目つぶるわけにいかないと考慮した重大な点があります。


 日本放送協会放送受信規約第4条「放送受信契約またはその種別の変更契約は、受信機の設置者とNHKの双方の意思表示の合致の日に成立する」との規約に着目したのか、NHKから受信契約の申込みをしても、テレビ所有者が承諾をしない場合には,NHKが、その者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって契約が成立する、としています。


 簡単にいえば、払わない者を裁判の訴えて、勝訴したら、契約が成立するということです。この部分の判決は、実質的にNHKの敗訴です。何十万、何百万人の不払い者個人を相手にいちいち裁判を起こすことは不可能ですから。ここで契約の自由が生かされています。


 強制徴収するなら裁判をして勝ってからにせよと言っているわけです。合意ずくの契約が先にあって、その後に受信料の支払いという順序です。考えてみれば、当たりマエダのクラッカーというわけです。ぼくは契約をしていません。


 多くの皆さんは、テレビを設置して、NHKに言われるままに受信料を払っていると思います、対価を払えば徴収に納得したとして、契約が成立してしまいます。しかし、本当は、まず契約するかしないかを検討して、その後に受信料を支払うか、支払わないかの態度を決定する方法を取り得るのです。支払わなければ、最高裁のいうように裁判の確定まで先送りできると、ぼくは解釈しています。


 ぼくは、NHKのニュースや解説を視聴しているだけでは、世の中や世界の動きは公平に伝わって来ないと思っています。戦前、戦中、放送機関はNHKのラジオだけ(もちろんテレビもインターネットもBSも民放もありません)でした。


 NHKは、政府・軍部の言いなりに「大本営発表」で米英への排外思想、中韓アジアへの蔑視思想、神がかりの好戦的愛国心を煽って、あの戦争の遂行に協力したのです。「大日本帝国陸海軍は、勝った、勝った、また勝った」とウソを流しました。いま、「Jアラート」が発出されると、NHKは、通常番組を止めて、狂気のようにがなり立てています。


 アへが亡くなるまで、NHKにはアへお抱えの政治部女性記者 イワタアキコがいました。アへに関することなら、政局もモリカケサクラも五輪もフクシマも外遊も、すべてにアへの支持,擁護専門の記者でした。NHKは、こういう記者が大きな顔をして罷り通る組織です。解説委員としても優遇しました。アへが銃撃死すると、まるで殉職するかのように退職しています。こういう権力者密着型の記者を止められないのがNHKの体質です。


 昨今のNHKニュースは、その反省が見られません。そんな放送局に受信料を払って支える必要があるとはおもえません。ウクライナ戦争の悲惨さだけを伝え、中国・北朝鮮がいかに日本の脅威であるかをレポートし、キシダメ政権の軍拡路線を無批判に流し、終わりにエンジェルスの大谷の活躍で結んでいます。


 NHKには海外ドキュや紀行などに、いいものがありますが、肝心の夜7時、9時からのニュースはひどいものです。アへやスカタン、キシダメの顔色をうかがって、批判精神がぜんぜん感じられないニュースに仕立てています。政権がいつも正しく、NHKは、それに媚びるだけです。こんなものはいらないのです。


 キシダメが6月解散を見送りました。一番の理由は、首相公邸でどんちゃん騒ぎをやった長男のせいで支持率が5%も下がったからですが、NHKは、バカ息子のことを一切触れず「先送りした課題に取り組む」ためとアホみたいな解説を7時のニュースのでやってました。


 むろん、民放にも問題は多くありますが、ここではNHKが、政府の広告塔ではなく、真に国民の暮らしと権利を守る自由な放送になるように願っています。そのためには政府から独立することです。受信料を取らず、広告を流せばいいのです。あるいは総合放送をやめてBSだけにすればいいのです。


 いまはNHKが廃業しても、視聴者は困らない時代です。困るのは、35才で平均年収665万円、40才で1000万円と推定される高い給与をもらっている職員一同と、都合のよい放送局を失う自公政権でしょう。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。



 参照『NHK受信料の研究』(有馬哲夫著 新潮新書 2023年)。

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