退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

「安倍晋三回顧録」

 表題の本を読みました。


(google画像検索から引用しました)


 2月に中央公論新社から出版されました。図書館で予約登録しましたところ、やっと順番が回ってきました。どんな内容か興味を持ちましたが、アへの本なんか、どうせ寄ってたかって美化したり、正当化したりの本だと思い、買うつもりは全然ありませんでした。そして、その通りでした。


 本は、生前のアへを18回インタビューしものを問答形式でまとめたものです。聞き手は読売新聞の幹部記者二人と、アへの最側近で警察官僚から内閣情報官、国家安全保障局長を務めた北村滋が監修しています。北村は「日本のアイヒマン」と陰口をたたかれた辣腕家。現職は、読売国際経済懇話会理事長並びに日本テレビ等監査役。要するにアへ御用新聞の、丸ごと読売本です。


    注 アイヒマン ナチスのユダヤ民族大量、移送・虐殺を指揮した人物


 読売新聞は名実ともにアへ政権の広報宣伝紙。自民党の改憲草案は読売新聞を熟読して貰えばわかりますと、かつてアへが発言した関係です。アヘ批判した元文科省次官の前川さんをありもしないスキャンダルをでっち上げて中傷報道したこともあります。当然、読むまえから、その点や執筆・監修者について、バイアスがかっていること、また回顧談につきものの自己正当化する姿勢を十分に斟酌する必要があります。


 通算8年余にわたる政権です。話題は多方面にわたります。「外交のアベ」については主要国のトップと、とりわけトランプとの付き合いには雄弁に得意げに語っています。但し、北朝鮮の拉致問題、北方領土など本人が最重要課題と言っていた問題など一歩も前に進まなかったことには曖昧な発言が多い。


 ただ、中国や韓国に対しては、明らかにマウントを取った態度です。アメリカにおべっかを使い、中韓などアジアを見下す姿勢は、見苦しいものです。自民党右派の連中は、伝統的にアジア人を侮蔑します。


 アへの偏狭な国家観をうかがわせる興味深い発言例は、フランスについてです。あの国は日本の6割くらいしかGDP(国民総生産)がないのに、「大国づら」しているという見解に見られます。


 フランスは人口も日本の半分くらいです。手厚い児童手当が効を奏して少子化対策が成功、大学も含めて教育費や医療費は無償です。世界中に知られている歴史と文化、ワインの香る大国です。一方で、年金支給年齢を62才から2年引き上げるという政策に百万人の反対デモが起きるという民意がくっきり表示される国です。


 GDP,つまり国富の国民への分配の仕方が民主的だからできる先進国ですが、アへは、そのことが分かっていない。アへのアタマにあったのは、軍事力こそが大国の証、戦時戦前の表現なら「一等国」という意識しかなかったのでしょう。こんな人物に8年余りも政治を任せた結果、日本は先進国からずり落ちかけています。


 アメリカに追従するよりフランスや北欧に習う政治家が、この国にはいない。国民が汗水流して稼ぐGDPが、極端に大企業や一部の富裕層だけを豊かにしています。


 さて、内政ではアベノミクスについて、「三本の矢」です。あれって、覚えていますか。あれだけ喧伝された施策遂行者としての直接的な評価を引き出していません。効果が上がったのは、株高だけ、サラリーマンン賃金はむしろ下がり、非正規雇用者を激増させたことや、政府の子会社だとアへが言う日銀は、黒田バーズカ砲を起用してデフレ脱却も図ったけれど、ぜんぜん成果なかったわけですから、当然の失策です。例のアベノマスクについては「悪評も評判のうち」と居直っています。


 東京五輪招致の際の「フクシマの汚染水は、アンダーコントロール」と言ったことも反省しておらず、「コントロールされていたのは事実、専用港内で仕切っていたから」と釈明しています。専用港が外海とつながって、ダダ洩れしていることを無視しています。


 アへが政治を私物化した、例のモリカケサクラについて。森友学園問題は「財務省が私の足を引っ張るための策略の可能性がゼロではない」、「全く身に覚えがない。一時的な言いがかりにすぎない」。公文書の改ざんについては「佐川さんの指示で課長以下がかかわったわけで、そこまで官邸の目は届きません」と責任転嫁。元は「私や妻が関わっていたら総理大臣も国会議員もやめる」と見得を切ったのが始まりだというのに他人事のよう。聞き手も追及していません。


 カケの獣医学部問題には、腹心の友,加計耕太郎からは、何も聞いていない。「私の意向だと強調すれば、早く実現する」と関係者が利用したかのような言い草。「私がかかわったらもっと早く実現した」」とむしろ、権力を誇示しています。


 サクラについて、関与を否定して国会で118回もウソ答弁をしたことについて、「国会の信用にかかわることです。政治的責任を重い」と、これも他人事のようにケロリ。英国のジョンソン首相は、コロナ禍に内輪パーティーがバレて辞任しています。


 保守反動のアへは、戦前復古を目指す教育基本法の改革、特定秘密保護法や安保法制の新設に注力しました。閣議決定で、自民党が結党以来、手を出しかねていた集団的自衛権の容認行使について、歴代の法制局長官が憲法上許されないとする立場をひっくり返すため、賛成派の駐仏大使を呼び戻して長官の首を据え変えたことについては「首相が人事権を持ってるのだから決めるのは当たり前」と、単なる人事異動の次元にすり替えています。国家の安全保障体制を、役人の人事異動で決めて、国会議論を黙殺しています。


 読後感を一言で言えば、暑いなか、時間のムダでした。472ページにわたる長編です。どこか予想外の新発見でもあるかと思ってましたが、それはなかった。国語もろくに読めないアへが、ながながとよどみなくしゃべっている点、不都合な質問には、極端に回答が短い点などは、そうとう監修の手が入っているのではないかと、詮索してしまいます。


 アへの功績は、アへが早逝して、アへなる暴政が、断たれたことにつきます。


 キシダメが政権維持のため、”アへもどき”を演じていますが、多くの国民は、すでにキシダメを見放しています。ただ、自公政権がダメだから、維新でも、という選択は、まったく間違っています。維新の本質は、独裁政治を目指していることです。維新は、カネと売名がつきまとう政治屋になってみたいという誇大妄想連中の吹き溜まりです。




(google画像検索から引用しました)

×

非ログインユーザーとして返信する