退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

田中希美

 素晴らしい、やりました、田中希美さん!


 (5000m 決勝。先頭は長距離界の女王ハッサン選手(二位)、力走する田中さんの後は1500mと二冠の優勝者キピエゴン選手。日本陸上競技連公式サイトから引用)



   ウッとしい暑さ、民意に背を向けるキシダメ政治。汚染水、保険証廃止、ガソリン高、軍拡増税、ウクライナ戦争、そんなウンザリする昨今に光った久しぶりに明るいシーン。午前4時前に起きて、テレビの前に座った甲斐がありました。


 ハンガリーの世界陸上大会。女子5000メートル決勝で、田中さんが力走,アフリカ勢の強豪にまじって8位に入賞しました。これが、どんなにすごいことか。これまでの日本記録と世界記録との差は、実に47秒だったのです。距離に換算すれば、300メートルくらいの差です。比較するのもおこがましい大差だったのです。


 田中さんは、日本では中距離走者の第一人者で、陸上競技ファンでない人でも、名前は知られていましたが、いつも口癖のように言っていたのは「世界と戦える選手になりたい」という大きな夢でした。


  ハンガリーと日本の時差は、日本の方が7時間早い。陸上競技ファンとしては、厄介な時間差ですが、田中さんの走りを生中継で見たいとなると、大変。予選も深夜に見ましたが、そのときも、日本記録を大幅に更新する快走に大喜び、ひとり真夜中の乾杯を楽しみました。


 何しろ、予選では、トンデモナイ大記録。14分37秒98という日本新記録を出して決勝進出でした。旧来の日本記録を一気に14秒更新したのですから驚きでした。女子5000メートルでは、日本選手の課題は、15分を切り、14分40秒台に乗れるか。そうでないと、世界と争えないと言われてきました。その壁を突き破り、一気に30秒台にのせたのですから、決勝での活躍の期待は高まるばかり。迷いなく、起きるぞ、と気合を込めて寝ましたら、ちゃんちゃんと目がパッチリ。


 水割りを飲みながら(選手諸君、田中さんごめん)、スタートを見守った。国際中継なのか、途中で棒高跳びの競技シーンが挟まり、イライラさせられましたが、田中さんは前半からぴったりトップ集団について行きました。世界の女王、ハッサン選手はいつも後方で走り、終盤に快足を飛ばす戦法ですが、今回はいきなり先頭に立ちました。


 ハッサン選手は、一万メートル決勝で、ゴール寸前転倒し、Vを落としていましたので、戦法を変更したらしい。田中さんは、そのハッサン選手や1500メートル優勝のキピエゴン選手らと先頭グループ6人の中に混じっています。決勝は、メダルを狙っての着順狙いになりますので、有力選手はスピードを上げたり下げたり,他選手を揺さぶりますが、田中さんは粘って付いてゆきます。


 先頭グループと二番手グループの差が徐々に開いても、田中さんは先頭集団の外側を位置取りして、軽快に跳ねるように走っています。ただ一人のアジア人選手で、いちばん小柄、赤いランニングシャツ、腰に「8」のゼッケンをつけた田中さんが、ポニーテールを振って長距離王国ケニヤ、エチオピア勢と互角に争っているのは感動的です。


 着順争いは、決まって最後の一周の速力競争になります。アフリカ勢がここぞとばかり、すごいラストスパートをかけて、みるみる他集団を離しますが、田中さんは、縦列になった6番目で必死についてゆきましたが、ゴール寸前、アフリカ勢2人に抜かれ、8位になりました。6月、3週間のケニヤの高地で修業してきた力が発揮できました。ただラスト一周60秒切りのスパートは目標はわずかに及ばなかった。60秒が実現できていたら6位入賞となったはずです。


 (5000メートルゴール。日本陸上競技連盟ホームページから引用しました)



 しかし、不思議なもので、決勝の一位記録は,田中さんが予選で出した日本新記録よりもずっと遅い記録(14分53秒88)です。やはり着順争いとなると、お互いがけん制し合って、スローペースになり、ラスト一周の鐘が鳴らされてからのスピード競走になります。ですから最後は、持久力に加えて短距離並みの速力が求められます。


 闘い終えた後の田中さんは、ワクワクしながら走れた。支えてくれたみんなの力と自分を信じて走れたとインタビューに答えていました。彼女にしては珍しく感情が高ぶったのか、涙ぐむ瞬間もありました。おそらく小柄な背中にずっしり重い期待を背負っていたのでしょう。よくやりました。


 今春からプロ(New Balans所属)に転向、世界を転戦しています。次は来年のパリ五輪が楽しみです。両親ともに陸上選手で、母親はマラソン選手でもありました。田中さんは23才。いずれはマラソン界に打って出ることが予想されます。わが老いの身の期待の星です。大いに楽しみです。


 田中さんは、1000メートル(2:37.33)の日本記録のほか、以下の日本記録保持者です。
1500m:3:59.19(2021.8 東京オリンピック)
3000m:8:40.84(2021.7 ホクレンディスタンスチャレンジ網走大会)
5000m:14:37.98(2023.8 世界選手権)



 陸上競技は、走る、投げる、飛ぶ、ことを数字で記録に表して争う競技。単純素朴な競技ですが、すべてのスポーツの基本です。陸上競技は、体操とかフィギアースケートとかの採点競技、あるいは野球やラグビーのような審判判定が持つあいまいさがまったくないのが、実にスッキリします。これが、ぼくの性分に合うらしく、子どものころから好きですね、陸上競技は。今回は、真夜中のカンパイを楽しめました。


  気をつけよう、汚染水と自公維!

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