退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

続々、フクシマの魚

 農林水産大臣のなんとかいう人物が、フクシマ第一原発から海中に投棄される「いわゆる処理水」を記者団の囲み取材に答えて、「汚染水」と話した。その直前の午後5時過ぎまで、そのことで対策会議に出ていたそうだ。うっかり本音が出たらしい。


 政府のご都合主義の用語では「処理水」となっているのに、閣僚から「汚染水」という言葉が飛び出して、首相キシダメは大あわて。「直ちに訂正と撤回を大臣に指示した」。その日の午後8時ごろ、なんとか農水大臣はしょぼしょぼした姿勢で記者団にキシダメの言う通りの弁解をしてました。


 政府は、言葉いじりが大好きです。「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」、「武器輸出三原則」を「防衛装備品」、「戦争」を「有事」、「戦艦」を「護衛艦」、「カジノ」を「統合リゾート」などと言い換えてます。戦時、戦争中は「敗退」を「転進」、「全滅」を「玉砕」と美化したり、「敗戦」を「終戦」と、いまだに言っている始末。政府の言い換え言葉には要注意です。


 ところで、サカナと国民の問題は、普通なら担当は,この農水大臣のはずです。ところが、いつも表に出ているのは、ずるそうな(ぼくには、そうとしか見えない)眼つきのニシムラ経産大臣です。経産省は、産業振興が本務ですから、このシフトを見るだけでも、政府は漁業者と国民に「寄り添っている」のではなく、東電と原発再稼働計画に「寄り添っている」。(寄り添うとは、最近、政府側がよく使うヤサシイ言い回し、です)


 さて、こんど汚染水投棄を見ていて、思い出すのはニッポンの4大公害。60年代前後には、高度成長期の影の部分として、産業公害が頻発しました。なかでも水俣病(熊本)、第二水俣病(新潟),イタイイタイ病(富山)、四日市ぜんそく(三重)が有名です。水俣は、当時の日本窒素肥料会社(現チッソ)。第二水俣は、昭和電工。イタイイタイ病は三井鉱山。四日市は、多数の重化学工業群が発生原因となっています。いずれも名だたる大企業の犯罪です。


 「水俣病」は、そのまま英語になっています。世界の公害史に残されている悲惨な工場公害です。同社の工場廃液が永年、海に放出されて、中に含まれていたメチル水銀が魚や貝などの水産物を通じて、食べた住民たちの人体に蓄積、発病しました。


 発端は、沿岸のネコ多数がキリキリ舞して狂い死にするケースが続出、ネズミが増えて困るという住民の訴えから、と言われています。中枢神経障害や胎児性の脳性麻痺とか、未曽有の患者を輩出しましたが、チッソと国は、長く原因関係も被害実態も補償も認めなかった。メチル水銀投棄の図式でみると、こうです。汚染水処理のプロセスとそっくり。


 

    (google画像検索から引用しました)



   (google画像検索から引用しました


 工場内で発生したメチル水銀が工場廃水と混じり、海へ。メチル水銀を取りこんだプランクトンを小魚が食べ、その小魚を中魚が食べ、その中魚を大魚が食べ、それらの魚を人間が食べて、体内に溜まるという食物連鎖が、根治不可能な病気を生み出したのです。


     


(いずれもGOOGLE画像検索から引用しました)


 政府は、企業重視で、早くから指摘されたチッソの廃液説を認めなかった。メチル水銀説でないという東京工業大の清浦雷作教授の「貝毒による有機アミン説」を擁護したりして、水銀説を認めなかったため、原因究明が大幅に遅れました。水俣病問題の解決が15年遅れたと言われる政府と御用学者、清浦教授の失態です。半世紀たった今でも、被害者救済という点からは完全解決に至っていません。いまも「汚染水は飲んでも大丈夫」という学者がいます。

  (facebookから引用しました)


  
 どう考えても、いわゆる処理水が、「科学的に安全だ」とは思えません。「実害」があるからタンクに溜めていたのです。IAEA(国際原子力機関)も、放出については推奨も支持もしないと条件をつけています。政府と東電は「安全」という言葉だけを切り取って判断しています。IAEAが言っているのは、タンクにためている限りは「安全」」だと読むのが正解だと思います。


 安全な水なら、なぜ捨てるのか、なぜ上下水道や灌漑や工業用水に使わないか。そんなシンプルな疑問に政府も東電も、まだ答えていません。多核種除去施設(ALPS)では、58種もの核種が除去されないと指摘する研究者もいます。


 原子力研究の専門家によると、原発の炉心に壊れて溜まっている核燃料廃棄物(デブリ)は「小型の太陽」のようなものだそうです。最高度の高熱で燃焼しています。冷却しなければ、原子炉の底を突き破る崩壊熱となるらしい。昔は、こうなると、地球の裏まで底抜けると言ったものです。


 それを防ぐには、終わりのない冷却をしなければならない。もちろん,事故以来、12年半たっても、1グラムの廃棄物も取りだせていないし、仮に取り出しても、どこで、どう保管するかも決まっていません。基本的になんにも対策がないのに、海に捨てることだけが先行するなんて。オカシイ―じゃーあーりませんか。ドイツの研究者の計算では、放出が続くと、全世界の海が約10年後にフクシマ汚染水で汚染されるそうです。そうなると、人も水産物も逃げ場がなくなります。


 京大元原子力研究所の小出雄章さんは、警告しています。

  (googole画像検索から引用しました)


  こんな物騒な汚染水の中で育つ水産物を、食べる気がしません。キシダメやニシムラら政治家たちや大阪のイソジン知事らはフクシマ産魚介を美味しそうに食べるパフォーマンスを見せて、国民をだましにかかっています。体内被ばくというのは、三日や一週間で起きるものでないことを承知してのフェイクですね。連れ合いは福島産のものは、ほかに比べて少し安いと話しています。生産者には申し訳ないが、老夫婦は食べません。


 政治家たちは、得意のときや窮地に陥ると、外に出掛けて、子どものアタマを撫でたり、乳児のご機嫌を取ったり、庶民的な買い物を見せたりするのが、習い性です。そこには、国民の気持ちに本気で「寄り添う」気持ちなどは、ぜんぜんこめられていないものです。


 こんご、ネコ・ウオッチングが、「炭坑のカナリア」となるかどうか。


 その前に政権を変えて、投棄をストップさせましょう。

×

非ログインユーザーとして返信する