退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

悪ふざけ

 「何をくよくよ川端やなぎ 水の流れを見て暮らす」


     

       (イラストはGOOGLE画像検索から拝借しました)
    
 この都々逸は、あの坂本龍馬が、近江屋で暗殺される三日ほどまえに詠んだとか。
 ホントかな。世直しに奔走し、敵に追われていた束の間の安寧を唄にしたのか。どこか、人生を達観した感じがありますね。


 こちとらは、追われることも、殺されることもない世で、長生きしていますが、川端やなぎも、川の流れもないところに住んでいますので、束の間の気晴らしは、本や映画やパソコンやスマホかな。


 世間には、おかしなことをして、人を驚ろかして楽しむ人が多いようです。ネットにあふれている短い動画、リールなら90秒、ティクトックなら15秒から60秒くらい。短いので、ついつい見てしまいますが、なかでもプランク(悪ふざけ)という、念の入った悪ふざけが面白い。どっきりカメラみたいなもので、驚く人の表情が、さまざまなのが面白くて声をあげて笑ってしまう。そうとう悪趣味ですね。。


 街路樹になりきった「木の葉人間」が通行人の前に飛び出して、女性に悲鳴を上げさせり、財布を拾おうと手を延ばすと、ヘビがついてきて、腰を抜かす男性。路上で女性を追い抜く男性が、大きなオナラをすると、女性たちは、なんとも微妙な、目玉丸くしたり、口元を手で覆い、押し殺したような表情になります。しばらく歩いたあと、肩を叩きあったり、笑い転げたり。


 オナラの音と似たような音が出る器械を持っているので、エスカレターや公園など、どこでも自由自在にオナラを出します。これに驚く人たちの顔つき、振る舞いが見もの。怒り出す人が皆無なのは、やむ得ない生理現象だとわかっているからですが、それにしても場所をわきまえて、、、という苦渋?の表情が興味深い。女性は、たいてい爆笑か冷笑をこらえて居ます。品のない悪ふざけですが、吹きだすような可笑しさがあります。


 タモリは、まだ売れない芸人のころ、友人と旅館に泊まったとき、中国人を装って入り,チェックアウトするまで、口から出まかせの中国語ふうの言葉で友人と会話し、宿の仲居さん(お手伝いさん)を騙したと言います。すると、仲居さんは、一生懸命、夕飯の世話や食い物の名前や、風呂場へ案内などを身振り手振りでわからせようと汗をかいてくれたそうで、人間観察の勉強になったといいます。


 そういうことから言えば、ぼくも若いころ、友人と組んで、悪ふざけをよくやりました。同僚と居酒屋で昼酒を注文する際、おかみさんに、こっちが呼ぶまで来ないでくれ、わざと念を押します。当たり前の話で、注文しなければ寄ってきませんが、そこをもっともらしく言い置いて、こそこそと酒盛りをしたものです。


 時どき、お代わりを注文する際も、もっともらしく、同じことを言います。会計の時に、おかみさんが「お宅さんら、どこの人?警察の方ですか」」と尋ねられて、「いや、菅内の税務署や」とピシャリ。おかみさんの顔がおかしかったなあ。ひどいことをしたものです。


 別の居酒屋のカウンターで。
「それにしても、吉永小百合は雲古(うんこ)するやろか」
「そら、せんで。小百合ちゃんが、そんなことするわけない」
 同僚は早稲田大卆で、学生のころ登校してくる小百合ちゃんを、じかに見ているというのが自慢。
「まさにお姫さま、掃きだめの鶴やった、雲古するわけない」
「まあ、京マチ子やったら、大きいの、しても、わかるけどな」
 こんな調子で、山本富士子、南田洋子、加賀まりこら、女優さんの名前を次々あげては、「するの、しないの」「固いの、四角いの」とやっていたら、
 カウンターの向こうのおばさんが、いきなり怒り出した。
「あんたら、アホとちゃうか。いい加減せえェ」


 まったく、思い出しても恥ずかしい悪ふざけ。あのころは酒を飲むと、上司や仕事の悪口ばかり。特に上司の悪口は、酒によく合うのです。サラリーマン稼業には、多くの鬱屈と少しばかりの喜びがあります。あまり個人にあれこれ言わないだろうと選んだ会社でも、そうですから、サラリーマン稼業は、もともと面白くないのが当たりまえかもしれません。


 来世があるとすれば、あってもなくても、別に構いませんが、サラリーマンはやりたくないね。何事かに一筋の職人仕事がいい、疲れたら、手を休めて、川の流れをみたりして、、、。長生きした果ての後知恵です。

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