退屈な80代

還暦、古希、傘寿を過ぎて 日々思うことを綴ります。

報復の連鎖 パレスチナ

 中東で、またパレスチナとイスラエルが殺し合いをやっています。
   なんで、こんな愚行が続くのか。
   少し長くなりますが、要点をまとめた、つもりです。


                (ガザは子どもたちの墓場になりつつあると国連事務総長発言。
                      GOOGLE画像検索から引用)


 第二次世界大戦後、ずっと、この両者は血みどろの紛争を繰りかえし、いつになっても、「中東和平」がみえてきません。ぼくの個人的な見解では、残念ながら永遠に解決しない世界的課題です。いまも双方の指導者たちがお互いに「民族を完全に壊滅するまで戦う」と語っています。あり得ない目的に向かって張り合っています。


 地震とか隕石の落下といった天変地異には人智が及びませんが、中東問題は、それと似た人類の宿痾(不治の病い)の一つではないかと思っています。両民族が憎しみ合う限り、紛争は終わらない、実に根深い問題です。両者の概要は、こうです。



  パレスチナ     イスラエル


民族  アラブ人    ユダヤ人
首都  ラマッラー   エルサレム (パレスチナも本来はエルサレム)
代表  アッパス大統領  ネタニヤフ首相
人口  480万人                   900万人(パレスチナ人の国外難民は560万人)
宗教  イスラム教   ユダヤ教   
聖地  エルサレム   エルサレム (キリスト教も)
言語  アラビア語   へブライ語 (日常は英語)
支援  アラブ諸国   欧米諸国 (米は兄弟国、日本は2国家併存派)
国連  未加盟     加盟
日本  国家未承認   国家承認 (138カ国がパレスチナ承認済み)


 歴史は複雑怪奇です。要約しても長い(涙)。 欧州、アジア、アフリカの3大陸の接点の地で、各民族の混在地でしたが、紀元70年、ユダヤ王国がローマ帝国に破れ、ユダヤ人は、この地を追われ、流浪の民となりますが、独特の才覚で、どの国でも社会の上層階級を誇ります。ユダヤ人にとって、この地域は「神が約束した地」と旧約聖書にあるそうです。したがって、自身の国家を持つことは最大の民族的悲願となります。


 一方の、パレスチナを含む中東地域は、砂漠とラクダと王侯諸侯が縄張り争いをする世界ですが、近世に入り、アジアと欧州を結ぶスエズ運河の開通で大陸間貿易の要衝となったうえ、石炭から石油へエネルギーの大転換に応えられる一大油田地帯であることが分かり、この戦略物資をめぐり、がぜん欧米列強の利権争の場になります。


 19世紀末、フランスで無実の身のユダヤ人中尉がスパイ嫌疑で有罪になった「ドレフェス事件」以降、欧州各国のユダヤ人は差別を嘆き、いっそう祖先の地パレスチナへ戻る運動を活発化させます。


 その後、第一次世界大戦で、イギリスは対ドイツ戦に苦戦します。戦費調達のため金持ちが多いユダヤ人を頼りにし、パレスチナにユダヤ人の国家づくりに協力すると約束します。(バルフォア宣言)


 一方、イギリスは、パレスチナ人を含むアラブ民族に対してドイツと同盟関係にあるオスマン帝国(トルコ)崩壊に支援するなら、アラブ民族の独立国家づくり手を貸すとする約束をします。(フセイン・マクマホン協定


 イギリスは同じ土地に二つの民族国家をつくるという二枚舌のうえ、さらにフランスとの間で、戦勝後は、この地域を英仏で分割統治することを密約します。(サイクス・ピコ協定)この有名なイギリスの三枚舌作戦が、その後の紛争の原因の一つです。大英帝国の独善的な策略と言っていいでしょう。


 第二次世界大戦後、ナチス・ドイツによるユダヤ人600万人のホロコースト(大量虐殺)が明るみに出て、世界中にユダヤ人への同情心が高まります。ユダヤ人はイギリスとの約束があるとして、祖先が住んでいた「約束の地」での国家づくりを目指し、続々と、この地に戻って行きます。


 その帰郷活動は、当然のことながら、ユダヤ人が流浪の民として抜けたあとの約2千年もの間、そこに住んでいたパレスチナ人多勢を排除、追放する動きとなり、非力なパレスチナ人は、周辺アラブ諸国へのがれて難民化します。両民族の領土対立が鮮明になります。武力闘争が始まります。(パレスチナ難民問題


 アメリカが主導する国連は1947年、この問題を解決するため、パレスチナの土地をユダヤ人6弱、パレスチナ人4弱,聖地がある部分を含め残りのわずかな地域1弱を国連管理という3分割決議を行います。


 パレスチナ人は、この不利な決議に大反発します。周辺のアラブ諸国もユダヤ人の国家建設を認めず、トラブルが頻発します。翌年の1948年、ユダヤ人はイスラエル国家の建国宣言します。


 これを機に直ちにパレスチナ人と周辺4か国のアラブ諸国がイスラエルを攻撃、第一次中東戦争がはじまり、1973年まで第四次戦争まで繰り返され、欧米に後押しされ経済・武力に圧倒的に勝るイスラエルが常に勝利し、国連分割比率を破って、下の地図のように領土を広げていきます。


 これは、明らかに国連3分割決議違反です。この結果、両者の対決は、領土問題はもちろん宗教問題、難民問題に広がり、そしてパレスチナ人=世界中のアラブ民族(イスラム教徒)にとって、イスラエル寄りの欧米世界(ユダヤ・キリスト教徒)に対する抵抗運動と進展して行きます。


  (第四次中東戦争のあとも、じりじりとイスラエル側(白色)が領土を広げています。
   パレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸(緑色)の二か所に追い詰められたうえ、
   高さ4mの壁で囲われています)
  (GOOGLE画像検索から引用しました)


 その後、1993年、ノルウェ―の仲介で「オスロ合意」といって、イスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長の間で、両者が将来、二国併存の可能性を探るパレスチナ暫定自治政府をつくることを協議、アメリカで二人は米大統いで署名し、両者の和解に光が差しました。二人はノーベル平和賞をもらう画期的な取り決めでした。


 ところが、その後、穏健なラビン首相はユダヤ教原理主義者とみられる青年に暗殺されてしまい、イスラエルは、今日に続く強硬派が主導する道に戻っています。紆余曲折がありますが、基本的に両者は憎悪の対決を深め、パレスチナ側は、報復のゲリラ作戦を頻繁に起こし、イスラエル側は壊滅作戦を繰り返しています。パレスチナには軍隊がなく、現在のハマスは、パレスチナ自治政府の与党でもあり、同時に武力抵抗のゲリラ勢力でもあります。


 問題の根を作った、特にイギリスは、この問題に消極的。アメリカはユダヤ人の富裕層が多く、ユダヤ資本が大統領選にも絡みますので、「オスロ合意」のように関与するものの、はっきりイスラエル寄りなので、アメリカの打ち出す方針にアラブ民族諸国は懐疑的です。


 日本は歴史的に、この問題に関わっていない国ですので、公平な第三者として仲裁に乗り出す役割を果たせるのですが、パレスチナ国家未承認のアメリカの顔色をうかがっています。今回の戦争についてキシダメは双方の停戦交渉さえ口にしません。主体性がない、へっぴり腰メガネです。ロシアのウクライナ侵攻を批判してもイスラエルのパレスチナ虐殺作戦を批判しないのは、典型的なダブルスタンダード(二重基準)です。


 ユダヤ民族が、およそ2千年まえの祖先の地に戻るのが正当な権利であるとすれば、インディアンと呼ばれた先住民はアメリカを、カメハメハ王朝はハワイを、琉球人は沖縄を、アイヌ人は、北海道を手中にする権利があることになります。


 SNSでは、アメリカはイスラエル国家を広大なアメリカ国内に引き取ったら、どうかなというコメントがありました。一見、荒唐無稽な話のようですが、興味深い話です。アラブ民族の海の中にムリヤリ、小さな要塞のような島を作るというのは、相当、強引すぎます。このコメントは、すくなくとも皆殺し合いは避けられるでしょう。


 ユダヤ人の流浪やホロコースト、民族差別を受けた受難の歴史については十分に理解できますが、だからと言って、パレスチナ人を容赦なく排除、追放し、果ては核兵器の使用をほのめかしまで脅すのは、到底認められません。今のやり方なら、永遠の報復合戦につながるでしょう。


 ウクライナ戦争は、いずれ終わるでしょうが、パレスチナとイスラエルの対決は、終わらない。双方の子どもたちは復讐心を胸に育ちます。イスラエルがガザの病院まで砲撃する狙いは、女性と子供を根絶やしするつもりかもしれません。パレスチナの子どもたちは、目の当たりに殺戮をみて、敵がい心を強め、成長すれば、自爆を厭わぬゲリラ戦士になるにちがいありません。


 国連決議も無視されたら無力です。国際法,国際人道法も直接的な罰則がない現状では、やったもの勝ちです。世界的な諜報網を誇る国防国家、「隠れ核保有国」のイスラエルは、ハマスの大奇襲作戦にメンツをつぶされて狂気の反撃を繰り返しています。パレスチナ住民皆殺し戦争遂行中です。戦争の恐ろしさをまざまざと世界に見せつけています。


 中東問題は、民族や国家とはなにか。そして人間が人間に対して底なしの敵意や憎悪を持てば、どういうことを起こすのか。イスラエルの立場、パレスチナの立場に立てば、どういう行動が適切なのかを考えさせられます。


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 ドレフェス事件  1894年、フランス軍大尉ドレフェスがドイツ側のスパイ容疑で逮捕される。無実の訴えに対し軍法会議で有罪になる。ドレフェスがユダヤ人であるための差別裁判でないか、正義や平等をめぐり国内が沸騰,後年再審で無罪に。ユダヤ人のシオニズム(パレスチナ帰還運動)を刺激した。映画『オフィサー・アンド・スパイ』は、これが題材。


 フセイン・マクマホン協定 1915年 第一次世界大戦中、アラブの太守フセインとイギリスの外交官マクマホンとの間で結ばれた秘密協定。中東を支配するドイツの同盟国オスマン帝国を後方から、かく乱する戦略に加担すれば、戦後のアラブ国家独立を保障するというもの。映画『アラビアのローレンス』は、これが題材。


 サイクス・ピコ協定 1916年、イギリス、フランス、ロシアでオスマン帝国が支配する中東地域の第一次世界大戦後の戦後処理に関する秘密協定。のちロシアが脱落、秘密をばらす。サイクスはイギリスの外交官、ピコは仏の政治家。


 バルフォア宣言 1917年、イギリスの外相バルフォアは、ユダヤ人の最大財閥ロスチャイルドに第一次世界大戦の対独戦争遂行のための経済援助をしてくれるのなら、戦後にユダヤ人のパレスチナ帰還運動を支援するという書簡を送っていた。ロスチャイルドは要請にこたえた。 


 パレスチナ難民問題 ユダヤ人の帰郷運動と1948年の第一次中東戦争で、イスラエルに家を焼かれ故郷を追われて国外へ逃れた難民は約70万人。その後の戦争でも増え続け、難民は第三世代、第四世代となり、周辺諸国で現在は約560万人に上っています。世界最大の難民グループとなっています。国連は「パレスチナ難民救済機関」を作り、支援しています。国連決議で「すみやかにパレスチナの地に帰還できるように」イスラエルに要請していますが、イスラエルは拒否しています。映画『ガザの美容室』、『オマールの壁』など多数あります。


 かつて体験したディアスポラ(離散)、ホロコースト(大量虐殺)の受難に苦しんユダヤ人が、立場を変えてパレスチナ人に受難を強いているように思われます。できる限りの理性と誠実さで、この問題に対処することが望まれます。続く言葉がありません。


   (google画像検索から引用しました)


    気をつけよう、汚染水と 好戦的な自公維国!

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